第7回一語一得 「未公開物件」っていったいなに??その定義は??
前回、前々回では、住宅購入に際して考慮しなければならない諸費用と税金についてお伝えさせて頂きました。
今回は不動産会社の営業スタッフがよく言う鉄板の営業トーク「未公開物件ですよ!」の「未公開」について、ご説明させて頂きます。
公開物件と未公開物件の違いとは?
「◯◯様!未公開物件がでました!!」
お客様は営業スタッフのそんな言葉を聞いて、不思議に思われているかもしれません。
「未公開って言っても、今、私に紹介してもらえる時点でそれは公開物件じゃないの??」と。
おっしゃるとおり、ご紹介している時点で「未公開」では無いような気もしますし、「未公開」というものにの明確な定義もありません。
ただ、業界全体で未公開と呼ぶための一番の目安となるのは、宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣に指定された流通機構(通称:レインズ)に登録されていない物件を指す事が一般的です。
※レインズとは「REAL ESTATE INFORMATION NETWORK SYSTEM」の頭文字【REINS】から来ています。
少し専門的な話になりますが、不動産業界の絶対的な法律「宅地建物取引業法」では、売主の利益を保護するために宅建業者が媒介契約等で物件を預かった場合に、それが専任媒介や専属専任媒介だった場合には指定期間内に「レインズ」に物件の情報を登録する事を義務付けています。
媒介業者が自社の利益を優先して、物件の情報を隠し、自社顧客のみで独占する、いわゆる「囲い込み」を防ぐためのルールであり、これに違反すると厳しい罰則が定められています。
結果として、この「レインズ」に登録されている物件情報は、全国の不動産会社で取り扱う事が可能であり、ここに登録されている時点で「公開物件」という定義付をしています。
では、どのような物件であれば、「レインズ」に登録されていない=「未公開」という状態になるのでしょうか?
レインズに登録されていない物件=売主が宅建業者で、特定の不動産会社と媒介契約を締結していない物件である
レインズに物件登録を義務付けているのは、売主が個人の場合の利益保護が目的です。売主が宅建業者(いわゆる分譲メーカー等)の場合は、そのメーカーは独自の販売網(当社のような不動産仲介業者)にのみ情報を提供し、相互的にビジネスを行っているのが現状です。
実際に新築分譲の開発現場がどのようなスキームで市場に販売されるのか?様々なケースがありますが、一例としては以下のような場合があります。
どの段階の物件が未公開?
未公開物件とは、上の図の①~⑤の段階の事です。この段階の物件は、広告規制のルール上、各種ポータルサイトや新聞チラシなどはできないものの、登録を頂いているお客様に直接ご紹介をする事は認められています。そのため、この段階で直接ご紹介している物件が「未公開物件」に該当します。
⑥の時点になるとレインズや各種ポータルサイトに掲載されている状態なので「未公開」とは言えませんね。
例えば新聞の折込チラシに「初公開!」と記載された広告なのに、一番良い角地などに済マークがついている場合は、未公開の段階で会員登録をしているお客様が優先的に購入をしている場合などが考えられます。
未公開物件=優良物件なの?
「未公開物件」は優良なお買い得物件か?残念ながらその答えはNOです。物件の良し悪しは周辺相場に比べて高いのか安いのか、希少なのか普通なのかが重要であり、公開・未公開は物件の良し悪しとは全く関係ありません。
では、「未公開」で成約になった物件は優良なお買い得物件か?この答えはYESと言えるでしょう。
メーカーや販売会社はなぜ未公開で売りたがるのか?それは広告というコストの節約が理由のひとつです(回転率など他の理由もありますが)。広告コストはそれなりの負担なので、それを1円もかけずに売れれば利益率が上がるのは当然ですね。
では、紹介を受けたお客様の心理はどうでしょう。それが普通の物件なら、あえて買う選択はしませんが、それが周辺相場に比べて安かったり、希少価値が高ければ、その時点で「よし買おう!」という選択をするかも知れません。ネットに一切掲載されておらず、誰も知らない情報が自分の元にもたらされ、優越感や満足感を得ることもできるでしょう。
そうなのです。世に流通している物件の多くは未公開の時期を経て公開されており、本当にお買い得な物件は未公開の時期に水面下で売れてしまい、そうでない物件が広告というコストのもと、市場にリリースされているという一面もあるのです。
未公開物件のリスク
なんだかこれまでの話だと、未公開ってとっても美味しい情報な気がしますよね。でも未公開物件にもリスクが伴う場合があります。
※リスクといっても、宅建業法は厳格な法律で、「未公開だからといって焦らされ、大事な事を告知されず、騙された!」ということはまずありませんのでご安心下さい。※
それよりも「未公開」という言葉の魅力でついつい購入したものの、実際に公開されてからも他の区画は全く売れず、気がつけばどんどん値段も下がり、自分だけすごく高く買っていた。。。という残念な事もありえます。
多棟分譲現場の最後の1棟を買うのは集団心理的に安心できますが、最初の1棟を買うのはリスクの伴う決断です。「未公開」という言葉に惑わされずに、担当営業スタッフの信頼度や、周辺相場の比較など、大胆かつ慎重な決断が求められます。
そこをしっかりと抑える事で、先取り情報の美味しいとこ取りというプロ顔負けの不動産購入ができる場合もあるのです。
★今回の一語一得★
未公開物件とは、一般的に「レインズ」や「WEB広告」に掲載される前の物件を指します。でも「未公開物件」=「優良物件」とは限りません。しっかりと周辺相場やご自身の条件と照らし合わせることも忘れないようにしましょう。
この記事を書いた人
- 殖産ベスト 専務取締役
- 古川 秋治
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