知らないと損?!「都市計画道路」とは?購入前のチェックポイントやメリット・デメリットなど
家を探していると、「この土地は都市計画道路の予定地です」と説明されることがあります。将来、家の前に大きな道路ができるかもしれないと聞くと、少し不安になりますよね。
しかし、都市計画道路について正しく理解すれば、建築制限などの注意点だけでなく、相場より安く購入できたり、税金が安くなったりするメリットも!
都市計画道路とは何か、購入のメリット・デメリットから簡単な調べ方などわかりやすく解説します。
都市計画道路とは?
都市計画道路とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を目的に、都市計画法に基づいて計画された道路のこと。
単に人や車が通るための道ではなく、都市の基盤を支える役割を担っています。
この計画は昭和30年代から40年代に策定されたものが多いのですが、令和の現在も事業化が決まっていない道路が数多く存在します。
都市計画道路の3つの段階
都市計画道路には、進捗状況に応じて以下の3つの段階があります。
【計画決定】着工時期は未定で、道路になるかもわからない
「計画決定」は将来のまちづくりを見据えて、位置や幅が定められた道路計画のことです。
地図にルートは描かれますが、将来必ず道路になるとは限らず、着工時期は未定のままで何十年も動かないこともあります。
【優先整備路線】早期整備を目指しているが、延期・中止になることも
「優先整備路線」とは、都市計画道路の中でも早期整備を目指す路線。
計画決定だけの段階に比べ、実際に工事が行われる可能性はグッと高まりますが、財政や地域事情により延期・中止となることも。
【事業決定】具体的に買収、立ち退き交渉などが順次始まる段階
「事業決定」とは、都市計画道路の整備に向けて具体的に事業を進めることが決まった段階です。
事業年度や予算が明確になり、用地測量や買収、立ち退き交渉などが順次始まります。この段階になると、計画の実現可能性は非常に高く、将来的に道路になる可能性はほぼ確実といえます。
都市計画道路にかかっている物件を購入することのメリット4つ
リスクがある一方で、都市計画道路にかかる物件にはメリットがある場合もあります。
メリット1|相場よりも少し安い価格で買える可能性がある
計画道路の予定地にある物件は将来性が見えにくいものもあるため、相場よりも若干低い金額で販売されることがあります。
「計画決定」だけではそこまで大きく安くはなりませんが、「優先整備路線」の指定がされていると、相場よりも価格が下がる傾向があります。
メリット2|土地の評価額が下がり、税金が安くなることも
都市計画道路や優先整備路線に指定された土地は、建物の建築制限がかかることが多いため、利用価値や市場価値が下がることが要因になり、相続税評価や固定資産税評価において減額補正が適用されることがあります。
メリット3|事業決定されたときに、買い取り価格が高くなる可能性も
道路が実際に事業化され、立ち退きが必要になった場合、土地や建物の対価として補償金を受け取ることができます。
補償額は、周辺の不動産価格などを考慮して算出されるため、購入価格を上回ることも。
また、譲渡所得から最大5,000万円まで控除ができるので、利益が出たときの譲渡税を大幅に減らすことが可能です。
メリット4|「近接地」は将来的な地域の発展性も
検討物件が計画道路の予定地ではなく「近接地」の場合は、計画道路が通る事により近隣の環境が良くなって、物件周辺が発展する可能性があります。
上のイラストは実際の上祖師谷エリアの計画道路の例ですが、城西・城南エリアであれば、想像よりも良くなるケースの方が多いイメージです。
また、計画道路が通った後に用途地域の変更があると、購入した時も価値が上がることも!
都市計画道路にかかっている物件を購入することのデメリット4つ
建物の構造や階数に厳しい制限がかかるほか、開通後は生活環境が変わるデメリットも知っておきましょう。
デメリット1|建築制限が厳しい
これらの制限は、将来の事業化が決定して立ち退きが必要になった際に、補償費用や解体費用を抑えることを目的としています。
ただし、計画道路の区域に指定されていても、全てのケースで下記の制限が厳格に適用されるわけではなく、個別の状況によっては緩和されることも。
構造 | 木造や鉄骨造など容易に移転・除去ができるものに限る。 鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)といった堅固な建物は原則として認められない。 |
階数 | 2階以下に制限 |
地階(地下室) | 設置不可 |
デメリット2|物件の一部が都市計画道路の場合、買い取り価格が低くなる可能性もある
購入した土地の一部のみが計画道路にかかってしまうと、残った土地が中途半端な面積になることで、行政に買い取られず活用に困る可能性があります。
ただし、2LDK程度の建物を建てられる40平方メートル程度の土地が残ったケースでは、個人の方に売却できた例もあります。
デメリット3|道路開通後の交通量と騒音の変化に注意
都市計画道路は閑静な住宅地にも通る可能性があり、開通後は交通量や騒音・振動が確実に増加し、生活環境が悪化するなど、環境が一変しすることもあります。
デメリット4|事業決定されたときは、新たな住まい探しと引っ越しをしなければいけない
事業化が決定すると、最終的に建物を解体し、引っ越しをしなければならなくなります。
長年住み慣れた場所から離れることには寂しさも伴いますが、引っ越し費用については心配いりません。
土地の売却(収用)が決まれば、その時期に合わせて必要な費用が補償として支払われるため、自己資金なしで次の住まいへスムーズに住み替えることができます。
東京都の都市計画道路の調べ方
計画道路の確認は、まず不動産会社に検討物件と合わせて聞くのが最も早い方法ですが、もちろん自分で調べることも可能です!
各市区町村のホームページにある地図情報サービス(都市計画図)を利用するか、都市計画課の窓口で直接確認できますよ。
インターネットで地図情報サービス(都市計画図)を利用して調べる
都内であれば、各市区町村のホームページで調べられます。
例えば、世田谷区では「せたがやiMap」というページがあり、そこから簡単に検索できます。
「テーマから探す」→「都市計画情報」→「都市計画施設等」のページに進み、調べたい住所を見ます。
白っぽく薄い道路形状のようなものが都市計画道路の「計画決定・優先整備路線の指定」の道路で、黄色い部分は事業が決定している道路。詳細については地図をクリックすると出てきますよ!
最新の進捗状況も!各市区町村の窓口に行って直接調べる
都市計画道路は主に、「都市整備局の都市づくり政策部 都市計画課」の窓口で確認できます。
最新の進捗状況や詳細を知りたいときは、不動産仲介業者も確認に行くことがあります。
都市計画道路予定地や沿いの物件を購入前に!確認すべき注意点3つ
都市計画道路予定地や沿道の物件を購入するときには、まず以下の3つのことを注意しましょう。
1. その道路が本当にできるのか?どの程度の進捗状況か調べる
都市計画道路は「計画決定」されても、すぐに工事が始まるとは限らず、数十年動かないケースも少なくありません。
一方で「事業化」や「事業認可」まで進んでいる場合は、数年以内に工事が始まる可能性が!
物件購入前には、市区町村の都市計画課で計画の進捗状況を必ず確認してくださいね。
2. 建築制限の有無と内容を把握する
都市計画道路予定地にかかる土地は、例えば地下室をつくることができなかったり、鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造などの強固な建物が建てられないなど、建築の自由度に制限が出ることがあります。
具体的にどんな制限があるのかを把握してから、購入判断をすることが重要です。
3. 将来のリスクを理解する
道路事業が進むと、国や自治体に土地や建物が収用される(強制的に買い取られる)可能性があり、その際は補償金が支払われます。
しかし、補償額は購入価格と一致するとは限らず、結果的に損をする場合も考えられます。さらに、立ち退きにより引っ越しや建て替えを余儀なくされるリスクもあります。
契約前にこうした将来の可能性を理解し、必要に応じて特約などで備えておくことが安心な購入につながります。
立ち退きが必要になったときの保証料ってどのくらい?どうやって決まるの?
立ち退きが必要になった際の補償額は、土地や建物の対価と移転にかかる諸費用で構成され、公正な価格を基に算出されます。
土地・建物の対価は「正常な取引価格」で決定
土地や建物の対価は「正常な取引価格」で決まります。
これは、売り急ぎや買い進みといった特殊な事情がない、自由な市場で取引されるであろう客観的な価格を指します。
この価格を算出するために、単一の指標ではなく、以下の複数の公的なデータが総合的に考慮されます。
最終的には、国家資格を持つ専門家である不動産鑑定士が専門的な見地から評価を行い、価格を算定。
- 地価公示価格:国が公表する土地取引の指標となる価格
- 都道府県基準地価:地価公示を補完する形で都道府県が公表する価格
- 近隣の取引事例:買収対象地の近くで行われた実際の不動産取引の価格
建物に関する補償
建物移転料 | 現在住んでいる建物と同等のものを再建するために必要な費用。 古い建物を新しくせざるを得ないことに対する補償も含む |
取りこわし工事費 | 既存の建物を取り壊すための費用 |
工作物の移転料 | 門、塀、カーポート、物置などを移したり、新しく設置したりするための費用 |
庭木の移転料 | 庭木などを移植するための費用も対象 |
引っ越しや仮住まいに関する補償
引っ越し費用(動産移転料) | 家財道具や事務所の備品などを新居へ運ぶための費用 |
仮住まい費用 | 家の移転工事中に一時的にアパートなどを借りる必要がある場合、その家賃など |
事業(店や工場など)に関する補償
営業補償 | 店や工場などを移転するために休業する場合、その間の収益の減少分、従業員の休業手当、移転を知らせる広告費など |
その他の諸経費
移転雑費 | 移転先を探すための交通費、住民票の移転といった行政手続きの手数料、引っ越しの挨拶状の費用など、移転に伴って発生する細々とした経費 |
都市計画道路予定内の物件は、判断を慎重に
都市計画道路予定地内の物件は、不確定要素があるからこそ、正しい知識を持って判断する必要があります。
該当エリアの物件を検討するときは、計画の有無や進捗状況を確認しながら、不動産会社の担当者ともよく相談し、将来の生活や資産価値への影響を考えて後悔のない選択をしてくださいね!
「都市計画道路」について解説した不動産のプロは、この人

- 殖産ベスト株式会社
- 白石 隼典(しらいし しゅんすけ)
- 実家がリフォーム会社ということもあり、学校卒業後すぐに住宅業界に。5年間建築を学び、不動産業界に飛び込みました。培った建築のノウハウを活かし、物件の魅力だけでなく、デメリットや建物の欠陥を見抜き、お客様にお伝えしています。
殖産ベストでは主に城南エリアを担当し、不動産インフルエンサーとして動画の配信も。ぜひチャンネル登録を! - 【保有資格】
宅地建物取引士 - 【公式YouTube】殖産ベスト/shokusanbest
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